ブランデーよりも高価な水「重水」

高級ブランデーよりも高価な水がある。
「重水」と呼ばれる水である。
水の化学記号は「H2O」であり、このうち水素には2つの同位体(1H・2H)があり、酸素には3つの同位体(16O・17O・18O)がある。

普通の水は1Hが2個と16Oが1個で出来ている。
2Hは、1Hと化学的性質は同じだが、重さが2倍あり重水素と呼ばれている。
この重水素という同位体を取りこんでいるのが重水である。

この水が存在するのは自然の水に限られ、量は0.015パーセントとごく微泣で、重水を作るには、これを100パーセント近く濃縮する必要がある。
その製法は重水の電気分解が普通の水より遅いことを利用するが、硫化水素ガスと水の反応による濃縮法もある。
さらに100パーセント近い濃縮水を得るには、ブランデーと同じ蒸留法も行なわれる。

重水は濃縮するのが大変なので、値段が高くなる。
高価な水だから、人の体にもいいだろうなどと考えて飲んだら、とんでもないことになる。
動物の呼吸や炭酸同化作用を奪ってしまい、生殖能力を衰えさせる作用があることが知られているのだ。

80パーセント以上の濃縮重水に入れたゾウリムシが、6~8時間で死んでしまったという実験結果がある。
また、20パーセントの濃縮重水をハムスターに与えると行動が鈍くなり、30パーセントの濃縮重水をネズミに四週間与えると生殖能力が衰えたという報告もある。

この重水の使い道はただ一つ、原子力の分野である。
重水を原子炉の中性子減速材に使うと燃料の燃焼効率がよくなり、プルトニウムも作りやすい。
重水は中性子を吸収するため、ウランが燃えやすくなるのだ。
燃えないウランを燃えるプルトニウムに変える働きをするというわけである。

原子炉の重水は消耗品ではないので、すぐに減るものではないが、最近は原子炉から漏れたり、再濃縮しきれない重水を補充するため、中国から買い入れたりしている。
その値段は、私たちが想像できないほど大変な額になっているはずである。

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