水道水を危険にする物質

水道水に塩素を投入することによって発生する物質が人体を脅かしていることは前回お話しした通りです。
その一方で、塩素の殺菌力をもってしても死滅さられない寄生虫が病気の原因になる事もありますし、さまざまな有害物質が水を危険なものにしています。
使用する水の全てをウォーターサーバーやミネラルウォーターでまかなえない以上、現在、日本の水道水で問題になっている物質には、どのようなものがあるかを知っておきましょう。

トリハロメタン

塩素と、フミン酸やフルボ酸といった有機物由来の物質が反応し合うとき、発がん性物質「トリハロメタン」が発生する。
この物質はクロロホルム、ボロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルムの四化合物の総称です。

トリハロメタンは1972年、オランダのライン川の水で最初に発見され、1974年にはアメリカで問題になりました。
ニューオリンズ市民のガン発生率の高さと、水道水のトリハロメタンとの因果関係がしてきされたのである。
1980年には日本でも、東京・大阪の浄水場でトリハロメタンを検出。
厚生省(現・厚生労働省)はそれを受けて、1981年にトリハロメタンの基準値を100ppb以下に定めたが、その後も各地で量は年々増え続け、生成しやすい夏の渇水期には基準値を軽く超える地域もあった。

トリハロメタンの弊害は発がん性だけではなく、アメリカの研究では流産、死産との因果関係が指摘されている。

硝酸性窒素

乳児の肌が突然青白くなり、呼吸困難に陥る「ブルーベビー症候群」というものがある。
これは、1945年にアメリカ・アイオワ州の農場で発生しました。
その原因は井戸水にふくまれる硝酸性窒素であることが判明した。
硝酸性窒素は体内で変化し、血液中のヘモグロビンをメトヘモグロビンに変化させてしまう。
その結果、酸素運搬ができず、呼吸不全が起こる。

1945年から1950年の間に、井戸水を材料にした粉ミルクを飲んでいたアメリカの乳児がり患した例は278件、そのうち39人が死に至った。
日本では、1990年に、井戸水の中の硝酸性窒素が原因で重度の酸欠状態に陥った例が報告されている。
硝酸性窒素はガンの発生原因にもなり、体内に入ると亜硝酸塩窒素に変化し、アミンなどの有機物と反応し、N-ニトロソ化合物という発がん性物質を発生させる。

また、硝酸性窒素は糖尿病も引き起こし、体内の消化器官内でニトロソアミンを発生させてしまうと、インスリンを生み出す膵臓のβ細胞の働きが阻まれてしまう。
硝酸性窒素のリスクは井戸水だけにあるのではない。
化学肥料に含まれる窒素が土の中で硝酸性窒素に変化することによって地下水の汚染、井戸水の汚染が起こるのであるが、同時に水道水の源水も同じ危険にさらされている。

水道水における硝酸性窒素、亜硝酸性窒素の基準値を上回る浄水場は増加傾向にある。
そして、浄水場は現在、この物質を除去する機能を備えていない。

有機溶剤

1981年、アメリカ・カリフォルニア州のサンタクララという地区で、幼児の先天性心臓疾患や流産が多発した。
この地域は「シリコンバレー」といわれる先端技術工場の密集地で、製造工程で使われる塩素系の有機溶剤、トリクロロエタン、ジクロロエチレン、イソプロピルアルコール、フルオロカーボンなどが土壌、および水道水の水源である、地下水を汚染していたことがわかった。
日本でも1982年に東京都内の浄水場の水源でトリクロロエチレンが検出されている。

この物質は金属機械部品の脱脂洗浄剤として多く使われる溶剤である。
目・鼻・のどの刺激、頭痛、麻酔作用、それに発がん性、肝臓や腎臓への障害の危険がある。
そのほか、ドライクリーニング洗浄溶剤のテトラクロロエチレン、同じくドライクリーニング用溶剤、テフロンチューブ製造などに使われるトリクロロエタンが「汚染三物質」として警戒されている。

寄生虫

1996年、埼玉県越生町でクリプトスポリジウムという原生動物の害虫による集団下痢が起こった。
町の簡易水道にこの虫が混入したことが原因だった。
クリプトスポリジウムは、塩素への抵抗力が強く、塩素を使った通常の水道水に対する殺菌法では死滅させることが出来ない。

このほか、塩素で駆逐することが出来ない寄生虫にランブルべん毛虫がいる。
インドやパキスタン、ネパールなどからの帰国者が感染することが多かったが、最近では河川で頻繁に検出される。
欧米でもこの傾向は顕著であり、アメリカでは集団下痢も引き起こされている。

寄生虫の混入やトリハロメタンの増加の背景には、濾過方法の問題がある。
もともと日本では「緩速濾過法」でろ過を行っていた。
原水を8時間静かにおいて不純物を沈殿させ、15~40日間かけてゆっくりと濾過する。
その後、さらし粉を加えて殺菌するという方法である。

それに代わって戦後に導入したのが、「急速濾過法」。
凝集剤「硫酸バンド」を原水に入れると、短時間で不純物が反応し、かたまりとなって沈殿する。
そのかたまりを取り除き、その後の濾過も短時間で急速に行う。

この方法をとると、効率性は格段に上がるものの、緩速濾過法で除去出来ていた寄生虫の混入を完全に防ぐことが出来なくなった。
また、アンモニア性窒素や臭気も取り除くことができない。
そこでたくさんの塩素を注入せざるを得ず、トリハロメタンを始めとする多くの有害物質を発生させてしまうのである。

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